マージナルな空間・中庭


マージナルな空間・中庭

マージナルな空間・中庭生活空間に「中庭」を取り入れるということには、その建築が持つ立地性などにより、さまざまな意味合いを持つ。都市型住宅における ものと郊外型住宅におけるものでは、その空間性には当然差異が生じるであろう。最近設計したいくつかの中庭を持つ住宅の事例を取り上げ、それぞれの中庭が 持つ性格について書いてみたい。


■前橋のコートハウス...おおらかに人を包み込む器

敷地は400坪の広さを持ち、特にこの敷地周辺は町の比較的中心地に位置しながらも,周囲の自然環境にも恵まれている。北には赤城山が見え、また、夏暑く 冬寒いという内陸性の気候の影響をうけ、いわば、東京などの大都市に立地する住宅と違い、より自然の影響力を受ける立地ということができると思う。敷地の 広さもさる事ながら、この空の広い前橋の敷地はわれわれにおおらかな気持ちを抱かせる。

建物の設計を行う時に考えたことは、この敷地から連想されるおおらかさをいかに建築空間に連続して行くかということである。建物はできるだけ伸びやかに配 置し、材料は「きなり」で使用し、構成は内部空間と外部空間の連続性を持たせることを意図して設計を行った。
中庭もその一環である。都心型住宅における中庭とは異なり、この広いある意味で取り止めがつかない外部空間に、ある明確な形態をもった家のへそにあたるス ペース持たせることを意図した。木製デッキで覆われ、中心に赤城山より移植したシャラの木を据えた中庭は、周囲からプロテクトされた外部空間という性格よ りは、むしろ玄関、居間、和室、階段室等いくつかの空間をシンボリックにつなぎとめる上での求心的スペースとしての役割を担っている。


■本郷の家...3つの庭を持つ家

この家は東京の都心部に立地し、周囲を隣家に取り囲まれた敷地に計画された。生活空間の中に限られた敷地の中でどのように外部空間を貫入させるかということがテーマとなった。
この住宅は3つの異なる庭により形作られている.
ひとつは,道路から玄関に至る北側の「アプローチの庭」で,ふたつめは南側の「自然を楽しめる庭」であり,3つめは中央の「屋内空間の延長としての中庭」である.これらの性格の異なる庭と屋内空間が相互に関わり合い,奥行きのある空間をつくることを意図した.

・北の庭
路地状敷地の導入部分を利用した庭で,通りに面した部分はパーキングとして利用されている.竹,砂利,枕木,つる性の植物が絡まるフェンス等により構成し,家の導入部を演出すると共に,町に向けての家の「顔」として形作った.

・南の庭
限られたスペースではあるが,武蔵野の林イメージした,「都市の中の雑木林」である.特に芝生を敷き詰めるわけでもなく,カツラ,コナラ等の高木と,剪定 を前提としない潅木等を用いて自然風の庭とた.また,デッキをあえて建物から離して庭の南端につくり樹木に包み込まれたスペースとした.

・中央の庭
居間,母親の寝室,水廻り,玄関などが連続し,部屋の延長としての屋外空間である.また,この空間を取り入れたことで,主要な居室がすべて南面させることが可能となった.床は玄関から玄昌石を連続し,中央に家のシンボルとしてヤマボウシを植えている.


■六甲の家...家のシンボルスペースとしての中庭

神戸六甲に立地する住宅である。周辺は古くからの住宅地で、この地域の敷地はそれぞれがある程度の広さを持っている。また、自然環境も豊かで、良好な住環 境を形成している。計画にあたっての与条件として、夫婦と子供2人のための住宅部分と、真珠のデザイナーである奥さんの仕事場を併せ持つことが要求され た。
1階は、不特定多数が出入りする部分である仕事場にあて、中庭は、4台分の駐車場であるともに仕事場から連続した外部コートである。人が「集う」ために、 広がりのあるスペースを1階部分につくり出すことを意識している。中央にはヤマボウシの木をシンボルツリーとして植えた。
2階、3階は住宅部分で、中庭空間ははすべての居室を南面化させるための装置として機能している。住宅部分においても、このヤマボウシの木は、家のどこに いてもその存在が感じられ、同時にこの家における中庭の存在は、家族の一体感を象徴するシンボルスペースとなっている。


建物とまちづくり
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